幼い頃の一途な執念を思い出してみませんか? [ピザ!]

2015年 インド

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あらすじ

 スラム街で暮らす幼い兄弟の話。彼らの父親は刑務所に入れられていて、家計は火の車だった。だから学校にも行かせてもらえず、生活費の足しにするため、毎日二人で線路上に落ちている石炭を集め買い取ってもらっていた。貧しかったけれど兄弟は明るく元気だった。

 ある日、スラム街のすぐ脇にあった空き地が閉鎖され工事が始まった。何ができるのかスラムの住民たちはみんな興味津々だった。やがてそこに現れたのはピザ屋だった。オープニングセレモニーには国民的スターがゲストでやってきた。兄弟はスターが美味しそうに食べるのを見て、すっかりピザに魅了されてしまった。

 その日から二人はピザのことで頭がいっぱいだった。しかしピザはとても高く、スラムの住民にとっては高嶺の花だった。どうしても諦めきれない兄弟はお金を貯めることにした。来る日も来る日も(少しズルをしならがら)石炭を集め続け、ついにピザを買うためのお金を集めた。しかし兄弟の夢はピザ屋の警備員によって打ち砕かれた。貧しい身なりを見て追い返されてしまったのだ。

 それでも兄弟はくじけなかった。再びあの手この手でお金を稼ぎ、今度は金持ちの子供が着ている服を買った。そしてそれを着て意気揚々とピザ屋に向かった。しかし今度は店長に文字どおり「叩き」返されてしまった。この仕打ちには、さすがの兄弟も傷つき落ち込んだ。ピザのことも大嫌いになってしまった。

 しかし事態は思わぬ展開を見せた。ピザ屋から叩き返されたときの様子を、スラムの子供が面白半分で録画していたのだが、その動画がひょんなことから国中に広がったのだ。ピザ屋は児童虐待のレッテルを貼られ、国中のメディアから激しく非難される厳しい立場に立たされた。そのピンチを切り抜けるために兄弟をピザ屋のゲストとして招待したが……。

クリックするとラストが表示されます(ネタバレ注意!)
 いつでもタダでピザを食べさせてやると言われた兄弟は、店の外に集まったマスコミややじうまが見守る中、好きなだけピザを食べた。そして「ピザってあまり美味しくないね、残しちゃおうか」と悪戯っぽく笑った。

感想

 インド映画は以前からレベルが高いと思っていましたが、過剰なエンターテイメント的演出にやや辟易させられることがありました(私が元々ミュージカル系が苦手なので特に)。しかしこの作品には、突然始まる歌やダンスシーンはなく、新時代のインド映画を感じました。プロットのリズムとバランスも良く、観ていて「?」と感じることがない点も好印象です。実際のスラムの衛生状態はかなり劣悪だと思うが、うまいアレンジで不快に感じるようなシーンが登場しない点も、作り手のバランス感覚の良さを感じます。

 作中、見様見真似でピザのような食べ物を作ってくれた祖母に対して「こんなのピザじゃない」と何の躊躇いもなく彼女の好意を踏みにじるシーンがありますが、やはり子供が残酷なのは万国共通なのだなと、妙に感心してしまいました。国や境遇は違えども、兄弟の姿に昔の自分を重ね共感できるところがたくさんありました。エンディングも微笑ましくよかったです。見るものが全て新鮮に思えた少年の頃の目の輝きを思い出したい方にお薦めです。

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