粋がってみるのは若者の特権。その始末は大変。 [スリ]

1959年 フランス

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あらすじ

 パリに住む貧しい若者のミシェルは、スリをしようと決意し、その数日後競馬場で決行した。うまくやり遂げたと思ったのも束の間、すぐに警官に逮捕され連行されてしまった。しかし剥き出しの現金しか持っていなかったことからすぐに釈放された。味をしめたミシェルは地下鉄の乗客をターゲットにスリを繰り返した。ミシェルが犯罪に手を染めているのに薄々勘付いた友人のジャックから、職を見つけるよう忠告されるが彼は耳を貸さなかった。それどころか他のスリ師とグループで反抗に及ぶようになった。そうやってミシェルは犯罪の世界にどっぷりと浸かっていった。

 ミシェルには寝たきりの母親がいたが、後ろめたい気持ちから会いにいくことを躊躇っていた。そんな独りきりの母を看病してくれていたのは、同じアパートの住人のジャンヌという女性だった。間も無く母が亡くなり、彼はジャンヌの手も借りて葬儀等の始末を終えた。

 スリの世界にどっぷりはまっていたミシェルは、ジャックやジャンヌの心配をよそに、仲間とともにスリを繰り返していた。そんな日々も突然終わりを告げた。仲間が逮捕されたのだ。警察の手が近づいてきていることを恐れたミシェルは国外へ逃亡した。

 ミシェルは国外逃亡中もスリで生活していたが、やがてパリへ戻ってきた。その足でジャンヌの部屋に行くと赤ん坊がいた。ジャックとの間にできた子供だった。ジャンヌを愛していなかったジャックは結婚を拒み、行方をくらませてしまった。その話を聞いたミシェルは自分が堅気になって面倒を見ると申し出た。

 それからのミシェルは、生まれ変わったかのように真面目にやっていた。しかしスリの味を忘れられなかった。囮捜査に引っかかり現行犯で逮捕されてしまった。拘置所で独り時間を過ごすうちに、ミシェルは初めてジャンヌが自分にとって大切な存在であることに気付いた。彼は思った。なぜそのことに気付くまでに妙な回り道をしてしまったのだろうと。

感想

 何かに熱中すると、周りが見えなくなってしまうのは、若い男によくあることです。ミシェルの場合、「貧しい者は富む者から財産を少しだけ奪うことは悪いことではない」という「罪と罰」のラスコーリニコフに似た考え方が、彼をスリの道に踏み入らせ、たちまちその世界に取り憑かれてしまいました。スリの手技を極めるべく努力する姿は、他人から見れば「そんなに努力家だったら、良いことのために努力すればいいのに」ですが、当の本人には善悪など二の次になってしまったわけです。

 ミシェルの場合、まだやり直せる時間が残っているうちに、自分の生きるべき人生を見つけたという結末ですが、気付いたときにはやり直すには遅過ぎたという人生の方が巷には多いと思います。生きるべき人生~ジャンヌと共に歩む~というのも、いささか勢いだけの思いつきのような気もしますが、今度の彼の選択が運良く正解であることを祈りたいと思います。

 悪くはありませんが、車の行き交う背景音が同じ音源の繰り返しで、メモリが少なかった時代のテレビゲームのようで気になりました。そんなところが気になる私もどうかと思いましたが。

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