2016年 アメリカ
あらすじ
パターソンは、バス運転手の詩人だ。または、詩人のバス運転手だ。
彼は夢見がちな妻のローラと犬のマーヴィンと小さな家で暮らしている。
彼の世界は詩で満たされていて、その他のこと-仕事、妻と犬との暮らし、その他一切合切-は、その世界を包む薄皮の外側にある。
だから、いまいち妻と噛み合わなくてもこだわらない。彼女のことを愛おしい、それだけで十分だ。彼の精神はいつも凪いだ海のようだった。
月曜日から始まる1週間。同じことの繰り返しのようで、少しだけ昨日と違う今日。
凪いでいた海も突然荒れ狂うことがある。土曜日、妻との外出から戻ると留守番させていたマーヴィンが彼の全ての作品を書き留めていた大切なノートを噛み散らかしていた。怒りと後悔と悲しみが綯い交ぜになって彼の胸中に押し寄せ、溢れそうになる。
日曜日、じっとしていられずに散歩に出ると、そこで詩を愛する日本人との短い邂逅に恵まれ、気持ちを持ち直す。
月曜日、彼はまた新たな詩を紡ぎ始めるのだった。
感想・コメント
ジム・ジャームッシュ監督の原点回帰ともいえる作品。ゆえにあらすじも短い。
ニュージャージー州で町医者をしながら詩作を続けた、現代アメリカを代表する詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの長編詩「パターソン」からインスピレーションを受けたのだろうか。
何気ないシーンでも雰囲気のある画作りと計算された構図は流石だ。
携帯も持たず、PCも使わず、ひたすら1冊のノートに詩を書き留め続ける彼は、おそらく変わり者だが、周囲から嫌われることなく、むしろ愛される変わり者だ。社会とこの距離感を保てるのは一種の才能だ。彼の生活を追体験することで観客も彼が生きている居心地のよい世界を感じることができるだろう。人間関係に疲れ気味の方に特におすすめ。
作風としては、最初の長編作「パーマネント・バケーション」に近いが、こちらは若かりし頃のジム・ジャームッシュのトゲが感じられ、雰囲気は正反対だ。見比べるのも一興かも。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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