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70年代に産み落とされた狂気じみたカルトの傑作 時計じかけのオレンジ

 

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1971年 イギリス、アメリ

あらすじ

 アレックスは仲間とつるんで勝手次第に振る舞う手のつけられない“ワル“だ。

 ホームレスを袋叩きにし、他のグループに喧嘩を売る。ある夜の極め付けは文筆家の家に押し入り、彼の目の前で妻を犯すという鬼畜の所業だった。

 アレックスの自宅は、彼の地位に相応しくない寂れた市営住宅だった。同居している両親はアレックスを恐れ距離を置いていた。アレックスのお気に入りはベートヴェンだった。学校をサボって大音量でベートヴェンを聴くのが好きだった。

 ある日、仲間たちがアレックスの自宅までやってきた。彼らがリーダー気取りのアレックスの暮らしぶりをバカにしているのが見え見えだった。仲間の1人が今後は自分がチームを仕切ると言い出しはじめた。アレックスは力でねじ伏せた。多少の波乱はあったが、結局は元通りになった。と思っていたのはアレックスだけだった。手下だと思っていた仲間に裏切られ、家宅侵入の現行犯で逮捕されてしまった。

 アレックスは懲役14年の刑に処せられた。2年間は監獄で大人しく服役していたが、改心するはずはなく、ずっと刑務所から出る方法を探していた。そんなアレックスにチャンスが到来した。政権交代したばかりの政府が有権者の人気取りのために、犯罪者を善人にするという画期的な治療法を採用することにしたのだ。ルドビコ式心理療法と呼ばれるその治療法の治験者になれば、すぐにでも釈放されると聞きつけたアレックスはその第一号に志願した。

 それからアレックスの地獄のような日々が始まった。ルドビコ式心理療法とは、毎日2回レイプなどの犯罪映画を強制的に見続させられるというものだった。強制的に見せるために、体を拘束されるばかりではなく、目も閉じられないように拘束されるという徹底ぶりだった。そしてその映像の背景音には事もあろうにアレックスが大好きなベートヴェンの曲が使われていた。やがてアレックスはベートヴェンの音楽を聴くと吐き気を抑えられない体になった。アレックスが「もう犯罪は悪いことだと分かった」と訴えても、プログラムは繰り返された。

 やがてルドビコ式心理療法の成果を発表する日がやってきた。アレックスはあらゆる挑発に全く反応しなかった。それを見て新体制の内務大臣は誇らしげに成果をアピールした。

 アレックスは解放された。自宅へ帰るとアレックスの部屋には見知らぬ男が住んでいた。両親が間貸ししたのだ。アレックスが改心したと訴えても両親の彼への畏怖を打ち消すことができなかった。家を出て行くあてもなく彷徨っていると警官に取り押さえられた。なんとその警官はかつて一緒につるんでいた仲間だった。すっかり腑抜けになったアレックスは、彼らに山奥まで連れ去られると、暴行を加えられ置き去りにされた。

 満身創痍のアレックスが息も絶え絶えでたどり着いたのは、皮肉にもかつて自分が鬼畜の所業をしたあの文筆家の家だった。文筆家はそのときの暴行で下半身付随になり、妻は自殺していた。最初のうちはアレックスに同情していた文筆家だったが、ふとしたきっかけでアレックスこそ憎むべき犯人であると気づいた。彼は迷わず反体制派の同志にアレックスを引き渡した。

 アレックスがどこか見知らぬ家で目覚めると、下階からベートーヴェンの第九が大音量で鳴り響き出した。文筆家と反体制派の同志のたくらみだった。文筆家はアレックスに復讐するために、同志はアレックスを利用して政府が推し進めるルゴビコ式心理療法がインチキだと言うことを訴えるために協力したのだ。アレックスの精神はたちまち崩壊した。錯乱した彼は、たまらず窓から飛び降りた。

 しかしアレックスはひどい骨折をしたものの絶命しなかった。全身包帯だらけでベッドに横たわる彼の元に内務大臣がやってきた。アレックスの事故は非人道的な犯罪矯正によるものだと政府に非難が集中していた。反体制派の思惑どおりだった。内務大臣はアレックスを懐柔するためにありとあらゆる便宜を図った。反社会的存在のアレックスが一転して国家権力の犠牲者に祭り上げられることになった。

 甘やかされ放題のアレックスに、生まれつきの悪人としての本性がむくむくと蘇ってくるのにそう時間はかかるはずもなかった。

感想・コメント 

 タイトルもアートワークも有名な一作。最初は意味不明なスラングやセットだらけで戸惑うかもしれないが、作中の世界観に観客をシンクロさせるための演出と割り切って聞き流しても問題ない(ここでよく理解しようとすると疲れてしまう)。

 人類史上、最悪の人格改造の科学に挙げられるのはロボトミー手術(開頭して前頭葉の一部を切除する荒技)だろう。今作はそういった外科的措置ではなく、”洗脳”による人格改造をモチーフにしている。洗脳では人間の本性までを変えることはできないという、分かりきった事実がオチだとガッカリする向きもあるかもしれない。しかし、私はこの作品が描きたかったのは、その反面にある”悪人は絶対に更生も改悛もできない”というダークな事実、そしていつの時代も繰り返されるポピュリズム政治の茶番の滑稽さだと思った。カルト臭がするが、丁寧に計算された演出などがB級カルトと一線を画している。ムカつくラストではあるが映画史上に残る作品に間違いない。必見。

  最後までお付き合いいただきありがとうございました。 

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