2007年 日本
江戸時代。
沼の干拓を止めてほしいとお侍に陳情した小ガッパの父親は斬り殺されてしまいます。
その直後地割れが起き、小ガッパは生き埋めになってしまいます。
現代。
小学生のウエハラコウイチは、河原で化石のようなものが埋まっている石を偶然見つけ、家に持ち帰ります。洗面台で石を洗っていると、化石だと思っていたのは小ガッパでした。水を浴びた子ガッパはとても弱っていましたが、面倒を見てやるうちに元気を取り戻してきました。コウイチは、小ガッパを「クウ」と名付けました。
クウは環境がすっかり変わってしまったことに戸惑いながらも、持ち前の愛嬌でコウイチやその家族たちと打ち解けていきます。
やがて夏休みになり、コウイチはクウと一緒に、河童の故郷と言われている遠野まで仲間を探しに行きます。コウイチはクウとの旅を楽しみますが、残念ながら遠野にはもうカッパはいませんでした。
クウの存在を隠していたコウイチ達ですが、やがて町の噂になり、マスコミが嗅ぎつけます。そしてあっという間に、コウイチの家の前にマスコミや野次馬が連日押し寄せるようになります。
カーテンを締め切り、電話線を抜いて家にこもる日々が続く中、律儀なクウは以上コウイチ達に迷惑をかけられないとテレビ出演に応じます。
しかしテレビ局のスタジオで衆目にさらされたクウは、混乱してスタジオから逃げ出し、偶然たどり着いた東京タワーをよじ登っていきます。
河童の自分の居場所がないことに絶望したクウは、東京タワーの鉄骨の上で空を見上げて「父ちゃん、もう死にたい」と訴えます。すると、快晴だった東京の空にみるみるうちに暗雲が立ち込めて雨が激しく降り、雲の中から龍が現れました。それは父親からの「まだ生きろ」というメッセージでした。
クウは気持ちを持ち直し、コウイチ達と帰宅します。
その一件の後、コウイチ達はコソコソするのは止めて、クウとともに堂々とやっていくことに決めます。しかしそう開き直った直後、クウのところへ1枚のハガキが届きます。そこには「コッチニコイ」と書かれていて、クウはこのハガキの送り主のところへ行くと言って聞きません。せっかく覚悟を決めたコウイチ達は、何とか引き留めようとしますが、クウの決意は変わりませんでした。
翌日、クウをダンボールに入れて宅配便として発送しに行くコウイチ。ダンボール越しにクウと悲しいお別れをします。
さて、クウはどこへ向かったのでしょうか……。
江戸ことばで行儀が良くて愛嬌いっぱいの子ガッパ「クウ」がとても愛らしい作品です。
少年期の子供が夏休みの間につかの間の出会いと別れを経験するという話は、昔読んだ児童図書にありそうな話で、随分昔、それを読んだときに自分の胸のうちに芽生えた感情を懐かしく思い出しました。
この作品には、好奇心をむき出しに無神経に日常に入り込んでくるマスコミや野次馬に対する批判も隠されています。
意外な結末にホッとさせられる良作です。季節を問わず童心に戻りたくなったら是非観てください。
それにしても子供時代の夏休みってなんであんなに思い出深いのですかね。昔「僕のなつやすみ」というゲームもありましたが、私はゲームでもラジオ体操さぼってしまう駄目人間でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。