2012 オーストリア
パラダイス3部作の第2作です。
(第1作「愛」は本作の主人公の妹テレサ。第3作「希望」の主人公はテレサの娘メリです。)
アンナ・マリアは放射線検査技師として働き、信仰深いカトリック教徒として慎ましい生活を送る熟年女性です。
毎日、自宅に掲げたキリスト像への祈りと聖歌の練習を欠かしません。
夏休みに入り、アンナは毎日移民が住むアパートを訪問し、布教活動に勤しみます。
そんなある日、布教活動を終えて帰宅すると、下半身不随の男が家にいました。彼の名はナビル、アンナの夫でした。2年前に家を出ていったのに舞い戻ってきたのです。
ナビルはアンナとよりを戻したがりますが、アンナは拒絶します。とはいえ追い出すわけにもいかず、仕方無しにナビルに食事を作ったり、風呂に入れてやったりと身の回りの世話をするのですが、ナビルは感謝するどころか、妻として当然の義務だと言い放ちます。それどころか、アンナが信仰するカトリックの教えを頭ごなしに否定するのです。
ナビルのせいで平穏な生活をかみ乱されたアンナは、最初のうちは神の与えた試練と耐えていたのですが、最後には、なぜこの様な罰を与えるのかと罵りながら、毎日祈りを捧げていたキリスト像を鞭打つのです。
平穏な生活を送り、そのことを神の御加護と感謝していた女性が、結婚という契約の呪縛が原因で夫の犠牲にされてしまう。そんな自分を神は救ってくれない、それどころか神の教えによればナビルを赦さなければならないというシニカルな悲劇です。ナビルが戻ってきてから数日間の間に起きてからの出来事しか描かれていませんが、これがどちらかの寿命が尽きるまで少なくとも十数年続くのかと思うと、アンナのその後を心配せずにはいられません。
第1作に続き、この作品も音楽無しで淡々と描かれています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。